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Channel: こころとからだがかたちんば
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2015年1月23日 金曜日 ~シンディ・ローパー・ジャパン・ツアー2015~

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昨年からすでに在った腫瘍が肥大化し、診察の上、検査することになった20日。
結果が良性でも悪性でも切除のための手術は決まっている。血の通わない女医の詰問にたまりかねて、武道館に走った夜。
今日、MRIを終え、結果まではあと10日ある。
何をどうあがこうが結果はすでにあるのだから焦るな、と言い聞かせ、今夜も、今の幸福を味わう。

“これは何々系”とよくいう音楽の系譜。それは時代と共に、大きな川の流れやその支流や合流などを経て移ろっていく。そこから、それぞれの音に込められた「ジャンル」とか「分類」が、創る人と聴く人によって産まれる。
それゆえに、ついAとBという音楽同士の比較をしてしまう傾向は否めない。

だけど彼女(シンディ)の音楽とショーを見てると、そんなことなんかどうでもよくて忘れてしまえる。
それは彼女そのままが目の前に居て、自らが出来ることと自らが出来ない限界を知りながら、自らがこれだけは任せてよということを、ホントに自由に踊りながら歌ってみせる。
その踊る手足の身振り手振りは、初めて出会った1984年から今まで、映像でしか見てこれなかった彼女に描いた像と寸分たりとも違わないのだった。

となりに来られた三人組。私より年上と思う、工務店勤務といった風情のがたいのやけに大きい方たちは、私と共に立ち上がり『シンディー』と叫び、ゴリラのように踊る。
彼女が自由であり続ける様に、我々も励まされ影響を受ける。
笑い・泣き、ショーというよりは、あるときは「お笑い」のライヴみたいで・・・
暮らすことの延長線上で、たまたまその”寄り合い”の場所が武道館だった、みたいな感じの、その寛大さにひたる。
まさに『トゥルーカラー』そのものを彼女自身が自ら等身大で表現し、こうするのよと言っている。

彼女には、日本との密接な関係をめぐるお話しがたくさんあり、ついそのお話しを綴ることが多い。
確かに2011年3月11日・あの日に彼女が日本に向かっていたことには、なるべくしてそうなったかのような運命の不思議さがあるのかもしれない。それから帰らずに公演を中止せずに日本にとどまり、不安に震える人たちに光を与えた。しかし、それは日本だからそうするのではない。
どこで何が起きても、深い情を持った彼女は、その場その場で自分が出来ることをするんだろう。

20日の武道館では、本当に素敵な時間をもらった。それに、こんな私を見てみなさい、というメッセージも受け取った。
肩の力を抜いて、耳を澄まして、心の声を聞いてごらんなさい。彼女はそう言う。

日本語の歌を上手に歌い始めたところ途中で分からなくなり、みんなが歌う声にサポートされ“Sorry”と言いながら、歌い切る。
その間違いをあえてしたのかどうかは分からないけど、でもどうやらそんなことはない。
過剰に加工しがちな演出は一切なく、目の前には至ってありのままのシンディがいるだけだ。
気取らず、思う事を語る。

歌詞を間違おうが、声が出なくても、そんなもんだよ。それでも歌い、ハッピーを共にわかちあえばそれでいいの。そう言い切ってしまっているようにも思えた。

夜、19時の定刻をむかえ、すべての明かりが消える。
ブルーのライトがステージだけを照らす。
バックミュージシャンがそれぞれの配置に着く。

消灯と共にいったん静まりかえった客席。そのあちこちから「シンディー」と呼ぶ声がする。

すると、彼女は、注目凝視する舞台ではない客席の出入口から取り巻きを引き連れ、客席をうねり歩きながら『シー・バップ』が始まった。
まさに、シンディ・ローパーらしいイキな登場に、ついついみんな微笑んでしまう。

テンポの速い曲とスローな曲を交互におりまぜる選曲の流れが素敵だった。
そして「オール・スルー・ザ・ナイト」は、なんといきなり3曲目に掛かり、屁理屈をごねた割に、イカンと思いながらも、この曲に涙がこぼれた。屁理屈は、その音楽を前にして瓦解した。



■シンディ・ローパー 「オール・スルー・ザ・ナイト」1983■
夜通しずっと 私は起きたままあなたと一緒にいるわ
一晩中ずっと

はじめて訪れた大切な時なんですもの

ああ、今日は夜通しずっと 一言も言葉をかわさなくても
2人とも同じ気持ちでいるってわかるわ

2人には過去なんかないから 後戻りしようとしたりしない
私と一緒にこれからのことだけ考えて 夜をずっと過ごすの

2人がひとたびスタートして メーターが倒れたら
もう最後まで一晩中走り続けるしかない

そして2人には最後なんてないの


夜通しずっと ノラネコが鳴き合っている
一晩中ずっと

昼間の無様さも忘れてしまえる
白く輝く街路灯の下でなら 少しはチャンスが生まれるかもしれない

ああ、眠くてたまらなそうな目をしたあなた
一緒にいさせてね
しばらくここにいさせてね


2人には過去なんかないから 後戻りしようとしたりしない
私と一緒にこれからのことだけ考えて 夜をずっと過ごすの

2人がひとたびスタートして メーターが倒れたら
もう最後まで一晩中走り続けるしかない

最後なんて、最後までこないわ

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