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Channel: こころとからだがかたちんば
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2015年11月13日 金曜日 「1984年11月の空気」

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聴きたい、聴いてみたい。。。
少ないおこづかい。その数百円で買った雑誌を、何度も何度もめくる。
めくる頻度が高くなっていくと、そのザラ紙は想いと反して、しだいにケバ立っていく。

数センチ角のジャケットとレコードレビューから、どこかでそのLPレコードを聴く機会を願うが、一曲もFMで掛からない。そんなLPレコードが体内には沈殿している。
くまなくFM番組表を見てエンピツや蛍光ペンでアンダーラインを引き、不確かな番組に淡い期待を掛けて、ねばり強く聞いてみるが掛からない。

残る糸口は、ニューウェイブ系貸しレコード屋かアンダーグラウンドレコード店だが、四六時中そこに向かえる環境ではなかった。そうして時が過ぎてしまう。
ぼやぼやしているつもりはないのに、1ヶ月経つと、雑誌はたくさんの新譜を伴って新月号が発売される。聴けないLPは何枚も幾重にも重なっていく。

時折振り返っては、紙面から匂う想像だけの音楽に想いめぐらせるが、文通相手に出会えないように、永遠に異邦であり続ける。

この三十余年の間に、その実像に出会えたものもある。
唐突の出会いが、いきなり突然現れることだったり。
それは、中古レコードを置くお店。
そんなつもりもなく、カタンカタンとレコードをめくっていくうち。

長年の恋が、会った途端にあっさり醒めてしまうものもあれば、想った通りの青い鳥や美少女だったこともある。あるいは、朝の電車を待つプラットフォームで一目ぼれしながら、そのままのイメージで温存された幻想の音盤もある。



■Band Apart 「As I Watch The Train」(1984年10月21日国内発売LP『マルセイユ』収録)■
バンド・アパートの「マルセイユ」は欲しい・聴きたいと切に祈りながら、”あの”1984年秋から31年目にして初めて聴いた。

港の夕暮れどき、背中を丸めた恋人同士が居る風景。
このジャケットのモノクロの色あせた紙だけで、1984年の秋が想い出される。





音盤エレジー。体内には、未だ少年のころのうずきが宿る。

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