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2015年11月13日 金曜日 「1984年11月の空気」

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聴きたい、聴いてみたい。。。
少ないおこづかい。その数百円で買った雑誌を、何度も何度もめくる。
めくる頻度が高くなっていくと、そのザラ紙は想いと反して、しだいにケバ立っていく。

数センチ角のジャケットとレコードレビューから、どこかでそのLPレコードを聴く機会を願うが、一曲もFMで掛からない。そんなLPレコードが体内には沈殿している。
くまなくFM番組表を見てエンピツや蛍光ペンでアンダーラインを引き、不確かな番組に淡い期待を掛けて、ねばり強く聞いてみるが掛からない。

残る糸口は、ニューウェイブ系貸しレコード屋かアンダーグラウンドレコード店だが、四六時中そこに向かえる環境ではなかった。そうして時が過ぎてしまう。
ぼやぼやしているつもりはないのに、1ヶ月経つと、雑誌はたくさんの新譜を伴って新月号が発売される。聴けないLPは何枚も幾重にも重なっていく。

時折振り返っては、紙面から匂う想像だけの音楽に想いめぐらせるが、文通相手に出会えないように、永遠に異邦であり続ける。

この三十余年の間に、その実像に出会えたものもある。
唐突の出会いが、いきなり突然現れることだったり。
それは、中古レコードを置くお店。
そんなつもりもなく、カタンカタンとレコードをめくっていくうち。

長年の恋が、会った途端にあっさり醒めてしまうものもあれば、想った通りの青い鳥や美少女だったこともある。あるいは、朝の電車を待つプラットフォームで一目ぼれしながら、そのままのイメージで温存された幻想の音盤もある。
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■Band Apart 「As I Watch The Train」(1984年10月21日国内発売LP『マルセイユ』収録)■
バンド・アパートの「マルセイユ」は欲しい・聴きたいと切に祈りながら、”あの”1984年秋から31年目にして初めて聴いた。

港の夕暮れどき、背中を丸めた恋人同士が居る風景。
このジャケットのモノクロの色あせた紙だけで、1984年の秋が想い出される。
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音盤エレジー。体内には、未だ少年のころのうずきが宿る。

2015年11月13日 金曜日 「みんな集まれっ」

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今日、仕事の合い間・川を眺めていたら、カモさんたちが大量に川面(かわも)を行進する姿。
集団ネッシー状態。
その珍しさから、なかまに指差して、その姿を数人で眺めていた。
ぼうっと。ほほえみながら。

田中さん「みんなゼッケンをつけて欲しいね。」
鈴木さん「競争にしてはノロいですね。なんか集会でもあるんすかね?」
わたし「上期を無事過ごせたから、飲み会でもあるのかな。」

毎日鳥を視ていると、不思議なことに、寒い時期のほうが、たくさん現れることに気付く。
冬に備えてのミーティングかもしれない。

***

鳥が大好き。
と言っても、生き物全般好きなのだが、この世のすべての鳥を知っているわけじゃないから、東京に住むじぶんが日常・密接にかかわり合うのは、スズメ、ハト、カラス、カモメ、そしてカモさん。
いずれも付き合うと、実に愉しく教えられることも多い。

こういう集会の際に、よく鳴いてはお互いコミュニケーションを取っているシーンに出会う。
一秒でも多く、われわれも含めて、こんな幸福な姿があるように。
そう単純に思う。

2015年11月19日 木曜日 「雑記帳 GRADATED GREY」

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11月18日 水 
夜明け後五時台のアラーム。音と意識は何度もあちらとこちらを漂う。
高台に昇りてっぺん屋根からたなびく雲、その横広い景色真ん中には、起立し数秒おきに光を放つ塔。
東墨田の清掃工場の塔は、この朝やけに厳然たる主張をする。その姿が朝焼けに鮮やか見える。

昨年歩き倒したすみだ全域。そこで肉体で解することが出来た川に沿う場所。
この歳になって、やっと東側東京の過去からのつながりを肉体に。体内で全体像が結ばれた。
生地・三ノ輪から千住域、山谷吉原、荒川地区方面、橋を渡って向島・玉ノ井とその周辺等々。一帯を貫く一枚の絵が脳に描かれた。

朝のゴミ詰め、茶を煎れすすり服薬、朝風呂。
外に出ると朝もやが漂い、シャッターを切る光の輪郭をぼやかす。

歩くに向かないテラテラの革靴風合成皮革がきつい。こんなクツを履かねばならない公的儀式の日も、もうおしまいにしよう。
この日、ふだんは選ばない経路を辿り、都心の規律に従う。人ごみ。
葬列を成し行列行進する連中は、電車で・駅で見事に互いに無言でもぶつからず、交通整理を自発的に行う。

こういう世界空気が距離置いて見えるほどに、ある種の毒はすっかり抜けてしまった。
どれくらいぶりかのネクタイが苦しい。
耳からはYMO「カモフラージュ」。
ギャヴィン・ブライアーズ「オマージュ」、シャドウファクス「ゴーストバード」等。
白々しい世界を寸分だけ離れるべく、途中脱線し、露地で一服点ける。
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かつての東京ウォーターフロント、バブル残滓は赤字を日々垂れ流しながら、それを隠しているつもりで堂々と未だ在る。
工場に漂う名残と匂いは自らの救いでも、レジャーランドと繋がる地区は無駄な建造物ども。そんな臨海地区で丸一日仕事。時代遅れのコンパニオンが痛々しい。

人間のえげつなさ下品さのカルマ。
二千十五年のびじねす(商売)、女子力と自ら言う者の価値と表層。
営業は水商売と同じ。説教臭い男の暑苦しいうんちくよりも、惹きつけるいやらしいカラダと色気さえあれば、カベは容易に乗り越えられる。
あちこちで見られるエロス的結合。ネットがエロで発展したように、くだらんうんちくより女にねだられる方がモノは売れる。

いっとき”社畜”という言葉がハヤッたが「畜」とは失礼千万。
(電通が産み出した首からカードぶら下げスタイル、その連中のみっともない風景が思い出される。)
それで思った、”社犬(しゃけん)”でどうだろう?しかし「しゃけん」とは車検みたいだし、畜を使わない分・語感に荒々しさや強さがない。頼りがない。
「脱社犬」。なにか間抜けでユーモラスだが、それくらいで良い。
この「社」は、会社の社であり、社会の社である。
忌み嫌いなものたち=ほとんど。
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仕事を終えて外に出ると土砂降り。月島へ向け走るタクシー。
雨を吹き飛ばしながら走る。曇るガラス越しに、渡る川向こうのレインボーブリッジがかすむ。

見舞いにいく、そのたび会話をしていく。
意識は明白だ。ただ病室に居なければいけない時間が長くなると、場と時間を超えてしまう。

「夜にそこにお前が居た」と言われる。
「2人で立っていただろうに。」

その2人は誰なの?そう聞く。
「その日によって変わるんだ。昨夜はお前と女。
別の日は別の人がつっ立っている。そういうものさ。」

「さっき来た看護婦さんは、その冷蔵庫にある残り食材で料理を作るらしいよ。
夜中にみんなで食べるんだ。」
冷蔵庫にはペットボトルなど水類しか入っていない。家の寝室と病室がだぶっている。
これは別に意識がおかしいのではなく、投薬の反作用でよく現れる現象と医師に説明を受ける。
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人が幻と、どこをどう認識して境目の判断を下すのだろうか?
先日、主治医に訊いてみた。それはわたし自身のことについて。今一度の再確認。

文化圏や社会背景、精神病判断は欧米基準にまずは照らすが、日本的風土には適用できない部分が大いにある。それを補うのは会話を通じた身振り手振り。或いはある種のカン。

私は、昔出会った色川(武大)さんの「狂人日記」を引き合いに、尋ねてみる。
「・・・でも結局、自らが吐露/言語化しなければ、各々の中で荒れ狂う生身、
その放置された個自身が描く像は共有し合えないのではないか?
しゃべくり上手でなければ、自らの状態さえ伝えられないんじゃないか?」

しかし、結論は砂に埋もれる。
「今まで長く話し付き合ってきた”あなた”には、明らかな病像と呼べるものは無い。」
そう断言される。

それはお墨付きと楽観視も出来ようが、短絡的で安易な結論でもある。
これらの受け取り方は、安易な病名でも云われて、つまりは犯罪者の刻印でも押された方がよほどマシだという、それである程度の安堵を覚えたい一心なのかもしれない。
幾度となく、嫌というほどこんなぎくしゃくとしたやりとりは、今までの数十年ところどころにあった。
結局何も明確な気の置き場を見失い、容易にくくれず像を結べない居心地の悪さに戻るだけ。
よくあることである。

■YMO 「灰色(グレイ)の段階」1981■
(1981年11月21日、テクノデリック)

2015年11月21日 土曜日 「雑記帳 ラジオの時間ですよ。」

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11月21日 土 朝、晴れ
設定を間違ったアラームが鳴る。消しては眠り消しては眠り。
ちゃんと消さないから、これを繰り返す。無意識と意識の合い間で。
それをきっかけにして、7:00起きる。昨日から始まったノドの痛みを感じる。
寝る前呑んだお湯割りと白湯のせいで、尿意が最高潮。仕方なく起き上がる。

お湯をヤカンで沸かす。
その間に、塩を入れた塩水でガラガラとうがいをした。
入院する者を看護をする側のじぶん。そういう者が風邪など引いている場合じゃない。

お茶を煎れる。一度別の入れ物に一滴残らず落とし、しばらくムラした上で移し替える。
おいしい藪北せん茶の葉っぱも最後になってしまった。新しい葉っぱを買い足しにいかないと。

布でさえぎった薄暗い室内に、次第に陽光が届き始める。
塩水うがいを終えてすぐはノドが痛い。しばらくすると、痛みはなじんでおさまる。
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ラジオをひねるとジプシーキングス。
一曲終わると放送事故か?沈黙が長い。
何か変だ。
『・・・・・こちらはニッポン放送、すみだ放送局。
東京スカイツリーから、ただいま試験電波を発射しています。』

『・・・・両チャンネル。
左チャンネル。
右チャンネル。』
発射音が聞こえる。

合点が行く。
昨夜、渋谷陽一さんの放送を聴いた後、そのラジカセは消された。
いつもはAMになっているのに、スイッチがFMになっていたのだ。
起き抜けにがさがさ。ランダムにチューニング回した中から出てきた、スパニッシュギターの心地良さ。

その後、美空ひばりさんか?一声一声の発声が鮮やかに聞こえる。
スタンダードジャズナンバー。これもまた素敵だ。
ジャズナンバーは何曲も続く。最初はひばりさんと思っていたけど、そうではないよう。

再度左右チャンネルテスト。
続いてパッヘルベルのカノン。パイプオルガンが優雅なテンポで演奏される。

***

冬開局を目指して試験を行っている、そう言われてきたAMラジオのFM放送化。
宮川賢さんら大好きなラジオDJは、今年早い時期からよく話しに出してきた。
「なんだか気恥ずかしい」し、気取ったFMのメンツを壊す行為に連中は嫌がってんだろう、そう言っていた。

なんでも簡便に済ませることで、人が元来持っていた心と体の機能を失ってきた平成21世紀の流れ。その延長線上。
あらゆる場所に防犯カメラが設置され、あらゆるものがネットワークで直結された相互監視の監獄。そこをシステム人間だけが跋扈する。
そんな中にあって、このラジオの新しい形だけには、現段階であまり抵抗拒否感が無い。

現実ラジコにもお世話になってきた。
ふだんチューニングしてもうまく聞こえない局が聴けるだけ有り難かった。
決して、FMなみのクリアさで聞きだいわけじゃない。
わたしにとってのラジオは、やはりノイズ混じりの中から伝えてくる、それを聞き分けようとする切実さにある。

ラジオを愛する老若男女並びに植物や生き物や沈黙するものたちへ、生きる力を運ぶならば、それで自由と豊かさが生まれるならば、これからもラジオだけは応援したい。

おだやかな朝。その一シーン。

■細野晴臣 「僕は一寸(ちょっと)」1973(ホソノハウス)■
8時を過ぎてTBSラジオ。生島淳さんが出ている。
「昔、TBSラジオは950ヘルツだった。」詳しいですね、と堀尾さん。
そりゃそうですよ、親父が当時『夜はともだち』のパーソナリティでしたから、と淳さん。

その放送を塾の行き帰りに猿楽町界隈、イヤホンで聴いていた。
じぶんが初めてラジオでハガキを読まれたのは、その『夜はともだち』冒頭だったことを想い出した。

今日は、せっかく早起きした晴れ間。
いつもより早く、街歩きの旅に出ようと思う。
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2015年11月23日 月曜日 「雑記帳 備忘録」

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11月22日(日)雑記memo
天才、坂本龍一も細野晴臣も、人の限界時間を超えたなら、もっとたくさんの作品を80年代に創ったであろう。
二人とも厳格に中途半端を許さない。それがボツ曲を産んでいたはずである。
それを拾って集めただけでも数百曲はあったはずである。
特に坂本龍一はいじればいじるほど、作品は劣化する。そうして潰してしまった曲のカケラたち。

当時の二人の脳にダイレクトに線を直結して。
時間経過とともに現れては消えていく去来するもの、そのエッセンスを鮮度あるうち、くだもののように凝縮出来たなら、もっともっと数千曲の響きが聞こえたかもしれない。

そう夢想する。

***

毎年年始におろす日記兼スクラップ帳は時間に追いやられ、白紙ページのまま師走をむかえようとしている。白紙ページを塗りつぶそうと思いながら、圧倒的雑事と時間速度はじぶんを超え凌駕していく。

昔、兄に云われた言葉を想い出す。
”負けが込んで来たら、人はどこまでも堕ちていく”。
どこかでそれを一気に挽回せねばならない、という意味として”ありていな言い方で申し訳ないが、おまえは大学に行くのが今一番いい選択肢である”。
二十歳のきちがいの頃、最後のつもりであいさつに行った兄の家で云われた。

いまやそんなことは遠く、どうでもいい。勝ちも負けもない。

細野さんが言っていた言葉、心に届いた言葉がよくよぎる。
そのときそのときで(その日どんなに不調であろうと)ベストを尽くさないといけない。三十代・四十代。。。
それが後になって効いてくる、ボディブローのように。実際そんな言い回しをしてはいないが、そう捉えている。

***

21日(土)夜、ニーチェ(100分で名著)付けたまま寝てしまっていた。灯りはつけたまま、首にタオル巻いて。眠っていたじぶんに気付き、明け方5時灯りを消す。

朝・地震で目覚めた。つぶあんぱん一個食べる。ノドが痛い。
ラジオからビージーズ「愛はきらめきの中に」。寝床で吉村弘のCDを聴きながら、ちくちくウニウニ、伝染るんですのページをめくる。
そのうち、手に本を持ったまま、また眠ってしまう。

疲労から起きると午後。お茶とパン食す。
mp3内の曲入れ替え、片付け物、入浴、そうやって時間稼ぎをするうち、夕方5時の外出となる。外はどっぷり暮れてしまった。
写真を撮る中、山谷で絡まれる。よくあることだ。それを抜け出る。指がかじかむ。

途中でバスに飛び乗る。耳からソフトヴァーディクト。
適当に降り、歩き、親の見舞いへ。

夕方以降、外で出現してきたランダムプレイリストを聴きながら、歩き、シャッターを切る。
エリザベス・ウェルチ『ストーミー・ウェザー』
柴野さつき『星たちの息子(サティ)』
ヨ・ラ・テンゴ『ブラック・フラワーズ』
ヨ・ラ・テンゴ『More Stars Than There In Heaven』
ヴァージン・プリューンズ『Sad World』
ビートルズ『丘の上の阿呆』
ウルトラヴォックス『ウエスタン・プロミス』
グローバル・コミュニケーション『14:31』
トレイシー・ソーン『スモールタウン・ガール』
ロバート・ワイアット『シップビルディング』
ポール・ヤング『愛の放浪者』
ペイル・ファウンテンズ『パーム・オブ・マイハンズ』
レイ・ヴァンピレット『ビオムタンテン』
吉村弘『ミュージック・フォー・9ポストカード』
22時過ぎ帰宅、湯を沸かす。心臓苦しい。
ラジオ点けると橋幸夫・地球楽団、お茶とあんぱん、MZ師にTEL、鼻をかむ。

1時過ぎ灯りを消し、坂口安吾の語りを耳だけで聴いていたが、眠れず明かりを付けた。
お茶飲むことをやめ、酒を引っ張り出した。
1月初旬に撮った写真を見ていた。撮ったら終わりで振り返らないことを、いやというほど教えられる。そうしているうち明け方になった。

■YMO 「ソウル・ミュージック」2011・イン・サンフランシスコ■
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2015年11月25日 水曜日 「雑記帳 備忘録-観覧車-」

11月24日 火
辺見庸さんのNHK番組をアップしてくれた方がいて、夜にそれを見ていた。
タイトルは「世紀末の風景」。90年代の終わり・21世紀前ころの番組と思われる。
ありがたい発見と機会。辺見さんの深いところからうめき漏れてくるような声。その声と語り口が好きなので、話題はどうあれ落ち着く。
https://www.youtube.com/watch?v=qzzaEE5G4ng

最初に観覧車が映る。辺見さんは、その速度感に”しみじみとしてしまう”。ものを考えるのに一番良い速度。
それなのに、それを忘れてより早く、より遠くと指向する社会と人間。
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このくだりで想い出したのが、大学時代当時のこと。
経済に一切関心がないじぶんが、無理矢理潜り込んいた桜井哲夫先生の「社会学」の授業。
その教則本のあとがきに観覧車が登場する。その本の一節が好きで、よくめくる。

「ウィーンのプラーターと呼ばれる地区に遊園地があり、そこに、最高点64.75mの大鉄輪にゴンドラを吊った大観覧車がある。1896年につくられたこの大観覧車は、映画『第三の男』で有名となった。
たまたま、九月にこのプラーターの観覧車に乗る機会をもったのだが、最初、そばにゆくまでこの観覧車は止まっているとしか思えなかった。近くにゆけば、たしかにゆっくりとだが観覧車は動いているのである。
そのとき感じたあの奇妙な感じは、この観覧車の近くにあるジェットコースターに乗ってみたときにさらにはっきりしたものになった。

どうやら、われわれの身体は、20世紀に入ってからというもの、とてつもない「速度」のただなかに投げ込まれてしまい、かつてのリズムなど静止したものとしか感じられなくなってしまったのではないだろうか。そしてこのスピードのただなかで、人びとはあとさきもみずに、ただひたすら走らされているのではないだろうか。
ふと、九月だというのに肌寒いウィーンの街角でそんなことを考えたことを、今、思いだしている。」(「近代」の意味 1984年著)

この本は1984年に書かれているが、この本にわたしが出会ったのは1987年のこと。
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1984年秋から冬へ。なにかがつっかえて行き詰まった時節。
当時、渚十吾さんが編集人となった雑誌「LOO」を毎月買っていた。
この本は未だにめくる頻度が絶えない、ある種のバイブル。

その12月号に「廃墟のルナパーク」というエッセイがある。はさみこまれた写真は、浅草の花やしきだった。雨の日、水たまりに向けて撮ったショット。文章は伊藤俊治さん。
未だ不思議な時空。それを漂わせた、数少ない昭和のにおいが残る花やしき。

この冒頭で伊藤さんはある本の一節を引用している。
「ずっと昔から子どもたちは、あらゆるものが永遠回帰するということを知っていた。」
(ウォルター・ベンヤミン『メリーゴーラウンドに乗る子ども』)

つながりを意識したこともないが、その後発狂する80年代中盤の東京にて、また別の観覧車に出会う。
後楽園遊園地の観覧車だ。
当時、御茶ノ水の予備校に通い、夕方から歩き出し、水道橋で折れて春日通りを進み出すと、観覧車は姿を現した。毎日毎日。

春日通りを歩くと、後楽園の観覧車を左側にして眺めながら歩く形となる。
夕方にはその左側に夕陽が沈んで行き、バックから光を浴びた球場と観覧車の輪っかが見えた。それを毎日見上げ、樋口一葉がかつて住まっていた菊坂近くの図書館に通っていた。

日航ジャンボが落ち、岡田有希子さんが亡くなる等々うちのめされるばかりの85-86年、ひたすら暗く厳しい素浪人の戦いの風景のなか。
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月日は不明だが(たぶん)86年、阿刀田高さんのショートショート集「街の観覧車」の一つをドラマ化したものを視た。
ここに後楽園遊園地の観覧車が登場する。ドラマタイトルに”観覧車”表記はなく”三人娘”といったタイトルだったように記憶している。

このドラマに「冴えない中年父親」という具合にして、役者・きたろうさんが出てくる。
幻のような”娘”を追い掛けて、たびたび後楽園遊園地の観覧車に乗る彼。
劇中、ジ・アート・オブ・ノイズのデビュー12インチ「イントゥ・バトル・ウィズ・・・」の曲が要所要所で掛かる。

そして、ドラマ最後”幻の娘”と共に乗った観覧車から身を乗り出し、彼は転落し亡くなる。その背後で「モーメンツ・イン・ラヴ」が掛かりエンドロールが流れる。
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あまり暗い話ばかりはしたくはないのだが、そんなことを想い出した。
辺見さんと同じく、じぶんも観覧車が子供のように好きである。

西尾久に棲んでいたわずかばかりの頃。
よく夜、人がいない近所を自転車で走っては荒川遊園地に行き、まったく動かない遊園地を眺めていたことを想い出す。

■The Art Of Noise 「Moments In Love」1983■
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2015年11月30日 月曜日 「雑記帳 冬の気配 -日記・11月25日(水)-」

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【ロバート・フリップ 「ノベンバー・スイート」】
まずは、音をポンと置いてみる。

■Jansen・Barbieri 「Breaking the Silence・・・The Way Light Falls・・・Distant Fire」1985■

11月30日(月)
NASAのVIDEO音楽のオファーが、元ジャパンのリチャード・バルビエリにあったのは、1984年・夏のことという。その”BGM”がLPレコードとなった『Worlds In A Small Room』。

A面始まりの「ブレイキング・ザ・サイレンス」は、イーノとハロルド・バッドがコラボレーションした「鏡面界」A面始まりの『ファースト・ライト』からの影響そのまんまである。
イーノは1983年、NASAの月への挑戦を実映像にした映画「宇宙へのフロンティア」のサウンドトラック『アポロ』を制作している。

その片方では、途中ブワァーと鳴る音色(おんしょく)は教授の「戦場のメリークリスマス」からの影響。そしてメイン曲のメロディは「戦メリ」そのもの。アルバム全体が、イーノと教授からの影響がないまぜとなって出来上がっている。

1987年、大学時代知り合った友人の下宿に泊めてもらうと、彼は実家・久留米から持ってきたこのLPとD.シルヴィアンの2枚組「ゴーン・トゥ・アース」をカセットに落としたテープを掛けていた。
2人で明け方まで話しながら、その背景で『Worlds In A Small Room』がよく鳴っていた。
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11月25日(水)
朝、お茶とパン。三島さんの命日。長袖ヒートテック着る。傘を持ち外に出る。まだ雨は無い。
車中マニュエル・ゲッチング。立っているのが苦しい、そう思ううち電車は着く。白い空、川端で一服。
昼近く雨が降り出した。

マスクして仕事、たまにハナをかむ。
午後、外に出ると雨。冬らしい寒さというのに街燈てっぺんには泊まるカモメ、川ではカモたちがみんなで遊んで泳ぐ。鳥たちには寒さも雨もまるで恵みのようで、愉しそうに見える。
電車を待っていると偶然O氏に会い、途中まで座って話すことになった。
建物に合い、誰にも喜ばれるものは何だろね。などと。
そんな話をしているうち経由駅に着く。幸手の工場に向かうという彼と別れた。

駅前のらーめん屋で、ラーメン・チャーハンセット食べる。おろしニンニクをたっぷり入れ、カラダをあたため励ます。
寒い中、湯気が立つラーメンをすする。男の学生さんが楽しげに友達とラーメンを食べるのが目立つ。
雨のなか一服着ける。破れ三度笠みたいなボロボロの傘、ホネが壊れたままでも差すかわいい女の子が通り過ぎた。そのさまがほほえましい。

あいにくの各駅停車。ハナが出るから、と前日より着用し始めたマスク。
マスクは便利な道具。顔の防寒対策にもなり、すれ違う人が会いたくない場合も、わからずに相手が通り過ぎていってくれる。一種の変装になる。

地方駅、不思議な色をした花。スプレーで着色されたかのようなピンク。
寒い中歩くとしんどいとともに息切れが苦しい。
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打合せ終えて外に出ると暗闇になっていた。歩いて無人駅に着く頃には、顔耳冷たくなってヘルニアも登場し出す。地方から都内に戻り、見舞いへ向かう。

駅前にはクリスマスのイルミネーション、もみの木、そしてクリスマスソング。北風がピューピュー吹き、道行く人は肩をすぼめて足早に歩く。
病室に入ると、久々に意識ある相手。会話やりとりもあり安心したと思えば、数分で痛い痛いが始まる。
脇でつくTVから天気予報、明日西日本には雪が降るらしい。天気予報が終わると「ためしてガッテン」が始まり、山瀬まみちゃんが出てきた。

病院を出ると雨が再開、橋を渡り坂を下る。さぶいさぶい、そう言いながら数キロ歩いてしまう。さぶさでいつもの首肩痛に加え頭痛がする。あったかくすればよくなるはずだ。
お腹が空くが外で食べるとお酒が呑みたくなり、呑んだら帰るのがおっくうになるからやめる。

駅構内、通る人の顔を見るがみんな冴えない顔付きに見える。電車乗るとがらがらの席に座り、先週のパカパカ行進曲を聞く。
島に着くと北風と雨が強くなっている。チョコパイとレーズンパンを買う。家に向かう道、寒さから来る首肩痛がひどくなり小走りになる。
帰って湯を沸かし、ほうれん草・にらを追加した野菜スープをことこと弱火で煮る。

夜半、原節子さんが9月に亡くなっていたことを知る。唐突過ぎて、何も言えない。
みうらじゅん先生の「仮性フォーク」掛けながら寝た。
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2015年11月30日 月曜日 「雑記帳 冬の気配 -日記・11月26日(木)-」

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11月26日(木)
朝、静岡茶とレーズンパン。鎮痛剤2錠、その他服用。
今週ついに暖房(エアコン)つけて寝た。朝風呂。朝も雨が残り、寒さは続く。急いでマフラーを下ろして首に巻く。押入れにしまっていたにおいがする。
コートにはまだ早い、寒さは年明け後だ。でも、もう無理はしない。我慢もしない。

外でもマフラーのおかげであったかい。
そんな恰好をしていると、ついキツネの親子や、朝には立ち寄れない露地ネコたちが脳裏によぎる。
歩き過ぎでさらにおかしい足、エレベーターを使う。

電車に乗ると、寒暖差でメガネがくもる。
携帯ラジオから流れるAMラジオを消し、mp3音楽に切り替える。
ティム・ストーリー’84年秋のアルバム、ムーンライダーズ『アニマルインデックス』etc。。。

途中座る。肩はまだ痛む。昨夜「痛いよー」と言うお袋の肩をさすったことを想い出す。ベッドにずっと横になっているから肩が痛いはずだ。
電車を降りると小雨模様、雲が空を覆った暗い光、鳥たちはあまり居ない。

数時間仕事をし、11時後輩の運転クルマに同乗して地方都市へ。
時間がなくて、コンビニでパンとおにぎりを買う。全部を食べきれぬまま打合せへ。

夕刻都内へUターン戻る。事故渋滞で高速はべたべた。
その流れで、夜誘われて1年に何度かのご奉公、夜の付き合い。中華屋で紹興酒を呑み過ぎ、早々に酔う。

深夜帰宅、泥のように眠る。

■ムーンライダーズ 「駅は今、朝の中」1985■
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2015年12月1日 火曜日 「雑記帳 冬の気配 -日記・11月27日(金)-」

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12月1日(火)師走初日
夜、戻る場所が見えてくるとトイレをもよおす。
思ったよりやけに徒労感があり、家に入って雑事を済ませどっかと座ると、もう動けない。
じっさいは動けるのだが、動きがにぶくなる。帰ったらやろうと思うことは次第にへなへなとしおれていく。そういうものだ。
今夜はウツの虫が出始めて、まぶたが重く、頭痛で発狂じみてくる。そんなときは無作為に意味のないことをする。世間はこういったものを総量一括で「ストレス」とくくるが、これほど安易なモンタージュ作戦の一翼を成す言葉はない。

11月27日(金)
朝、何もしたくないほど酒残る。
「もう外でお酒を呑むまい」そう何十回言い、何十回カラ手形を切ってきただろう。
外に出ると青空、鮮やかな朝日。霧(きり)で電車遅れ。車中でジャンセン・バルビエリがたおやかに鳴る。

朝日の下、川のほとりで、パンフルートを練習するおじさんに出会う。乾いた音と青空。
仕事場着いても、まだ赤ら顔。お茶2リットルボトル飲む。昼はお弁当、ねばねばサラダ、そしてポタージュでカラダをあたためる。

歯医者さんに行くべく2時半に外に出ると、空の青さと光の純度は元旦のよう。
もう秋ではない光が唐突に、じぶんに向けて冬のおとずれを裏打ちしてくる。
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ハナ垂れ小僧は、夕方かなりハナをかんだ。
これがよくなかった。その後突発性難聴?右耳が聞こえなくなる。
音が聞こえずこもり、周囲の音は脳内でダブって多重演奏。疲れから来たものか?平衡感覚もおかしい。「これはまずい」と明日でも行ける耳鼻科を「万が一」と探す。

夜の帰り道。
マフラー巻いて歩くと空にまん丸お月様、橋の上から。イチョウが街灯浴びて黄色く輝く。
耳の悪化を恐れ、何の音楽も聴かずに帰る。音のない視界に「ああそうだったか・・・現実は」という発見がある。

島着いて隘路を迷走すると、路側の下水のフタから水の音が聞こえる。
島の各所にある水琴窟の水滴みたいに良い音を鳴らす。
森の夜闇に白ひげタワーとスカイツリーが浮かぶ。

帰ると着替えて一週間分の洗濯。ひとりだけの夜、ゴージャスな夜。

お湯割り呑みながら片付けもの。洗濯物の室内干し完了。
聞こえなかった片耳、しだいによくなる。作業しながらイーノの作品「スモール・クラフト・オン・ア・ミルク・シー」を聴き、寅さん第24作目見る。
23時、渋谷(陽一)さんの「ワールドロックナウ」。月末はリクエスト特集とのこと。
渋谷陽一 『ワールドロックナウ』 ~月末リクエスト特集『ロックで踊れ! この一曲』~
・HOUND DOG // ELVIS PRESLEY
・SAVED // BOB DYLAN
・LONELY BOY // THE BLACK KEYS
・UPTOWN FUNK feat. BRUNO MARS // MARK RONSON
・SMOOTH CRIMINAL // MICHAEL JACKSON
・DANCE OF THE SCREAMERS // IAN DURY & THE BLOCKHEADS
・TWO HEARTS BEAT AS ONE // U2
・A BRAIN IN A BOTTLE // THOM YORKE
・GET LUCKY // DAFT PUNK

(ニューヨーク情報)
・WHAT DO YOU MEAN? // JUSTIN BIEBER
(11月のエンディング)
・WAITING TABLES // DON HENLEY  (渋谷さんのホームページから引用)

実に豊かな楽曲で埋め尽くされたリクエスト特集だった。

■Jansen・Barbieri 「Moving Circles」1985■
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エノキ・キャベツ・ニンニク・にら・タラコを具材に、焼きそばを創る。
0時からTBS「粋な夜電波」ビートルズのナンバー。
数日前から、パソコンのネット不調。それでもラジオは健在。
1時からみうらじゅん先生の「仮性フォーク」。3時睡眠薬服用、消灯。

2015年12月1日 火曜日 「雑記帳 冬の気配 -日記・11月28日(土)-」

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11月28日(土)
10時過ぎ目覚めると首が痛い。暖房つけたまま寝たのだが。夢の中で地震があった。
TBSラジオ・ナイツの放送、五七五川柳「冬が来た からだのかゆみが ボクに言う」
なるほどそれでカラダが最近かゆいんか。

休みの午後。
外に出ると、光は風景にコントラスト強く当たっていた。たぶんこの秋最高潮の日差し。
こういった日は、どこに向けてシャッター切っても絵になる。そこいらじゅうを撮ってはいずり回る。
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イヤホンで久米さんの放送を聞きながら放浪していたが、14時台のゲストが面白くない日は浮気をする。今年知った文化放送の番組に変えると、いきなり世良(公則)さんの声、あんたのバラード。

曲が掛かるだけでなく、当人がゲスト出演。
インタビューで語る世良さんのコトバの歯切れよさ、そこに惹き込まれる。
「50代なんてまだまだ」という言葉のチカラ強さ。説得力。じぶんに照らして言うのではない言葉である。それはこないだ爆笑問題のラジオにゲスト出演した際にも思ったこと。

ストーンズや多くの先達たちが現役で未だ走り続け格闘している中、へたっている場合じゃない、世良さんはそう言い切る。言っている内容ではない。肉声の強さがもたらすもの。
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何ら変わらずアグレッシヴな姿、そこに情動を掻き立てられ、鳥肌が立つ。
世良さんの最近の言行一致の姿は何一つブレがない。たぶんこの人には、ウソや作為というものが存在しないんだろう。

みうら(じゅん)さんが西城秀樹を語った際、「なんでこの人は、大げさな手振り身振りをするんだろうか?」と考えた末、そうかこれがロックなんだな、と気付くくだりがあった。
同じ疑問をじぶんも70年代抱いていたが、世良さんのありさまにも同じ”わけのわからなさ”を「ザ・ベストテン」を視ながら思っていた。
それは、誰も見ない深夜テレビで初めてRCサクセションを見たことにも言える。
こたつに入りながら、見るつもりもなく見てしまったRCのハデハデの衣装に「まるで、チンドン屋だな」と独り思った夜に繋がる。その夜が、その後に繋がるとは思いもしなかった。

当時、サザンの桑田さんが「オールナイトニッポン」で、半ば酔っぱらいながらジョン・レノン等々の音楽を掛けていた裏、文化放送「セイ・ヤング」ではふとがね金太(ツイストのドラマー)がDJをやっていた。小学生の夜の楽しみだったTBSラジオ「一慶・美雄の夜はともだち」から一拍後、この2つの番組を深夜・交互に聞いていた。

”ロック”という言葉を忌避してきた80年代以降の曲折。
いったいロックとはなんぞや?という疑問は未だ晴れないが、今の世良さんの姿には惹かれる。当時観て・聴いた「あんたのバラード」は、今違う響きをしてくる。
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爆笑問題の日曜サンデー『ここは赤坂応接間(世良公則)』(6月7日)
https://www.youtube.com/watch?v=WuoSq1S5nRI

光と影、冬をめぐる歩き旅は、生地三ノ輪、王子経由で池袋方面へ。
ラジオは久米さんから宮川さんへ移ろい、陽はあっという間に赤く傾く。
駒込で立ち食いそばを喰らい、裏道街道を伝っていく。
夜、見舞い。三日前よりはるかに調子良い。
病室のテレビチャンネルを回す、BSで松下奈緒さんがモネを紹介する番組を見る。
モネの好きな絵が50代に描かれたことを知る。
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交通網に頼りながら、最後は亀戸に辿り付き、そこから島まで歩いた。
やっと辿り付いた深夜、伊藤政則さんの「パワー・ロック・トゥデイ」を聴く。
ピンクフロイドの「ザ・ウォール」をめぐるあたりの話しとインタビュー。

■ピンク・フロイド 「幻の翼」1987(アルバム『鬱』より)■
1987年当時、同じ病を持つ人から「今度のフロイドは良いよ」とさかんに言われた。
それを流して耳をふさいでいたじぶんが作品「鬱」の良さを理解したのは、3・11があった2011年の暮れのこと。

今年、酒を飲みながら兄と音楽談義をする機会に多く恵まれた。
ここ数年フロイドを聴いているじぶんに『どのへんを聴いているの?』と聞きながら、作品タイトルでは分からない兄に、このジャケットのこの曲という伝え方をしては「ああ、あれね」とやっと理解される具合で話は進行した。
作品「鬱」全体が好きではあるが、お互い一致したのが「幻の翼」だった。

過去の栄光を持つ者は、決してドサ回りやナツメロに堕ちるなかれ。
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2015年12月2日 水曜日 「ニューウェイヴ・カセットシリーズ ① 1981年11月10日」

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今年、夏以降だろうか?新しいラジカセを買った。
お店で悩み、価格とデザインと機能を検討して買ったラジカセを、「とっても」気に入っている。

ところが、買ったものを買っただけで放置してしまうクセあるじぶん。
ラジオを聞くばかりで、購入主目的だった「カセットテープを聞くこと/mp3化すること」を行えずにきた。

やり方がよく分からず、寝かせていたのだ。
やっと重い腰を上げたのはここ最近。コツコツと1本づつ聞いてはmp3化をやり始めた。
雑誌類にカビが生え出してきたように、カセットテープも安心はならない。
すでにアウトなカセットも多いだろう。

こないだ手始めに、イーノのインタビュー番組を聞きながらmp3化した。
そして、先週からは、1981年から作り出した「ニューウェイヴ」カセットシリーズ(46分か60分テープ)を聴き出した。
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このシリーズは主に、渋谷陽一さんのサウンドストリートやクロスオーバーイレブンなどを聴きながらエアチェックした曲で構成されていた。
モノによっては「サウンド・オブ・ポップス」「ジェットストリーム」などなどのラジオ番組で発見した曲、場合によってはLPレコードから落とした曲も入っている。
音楽の「今」を体内に取り入れるための媒体として、勝手にシリーズ化し出した。

それまでに分散して録音したカセットはあったが、時々刻々進む音楽シーンを俯瞰するには。。。と考えた末で「全部好きな曲はその時点で入れ込む」という方法に行き当たった。

最近、とある人が”全てのものを一冊のノートに”といった日記法でカネもうけをしていることを知ったが、そんなことは誰もがやっていること。そういった考えに基づく、じぶんなりの音楽版。
みうらじゅんさんのエロスクラップ・ブックも、同じような想いで始めたものだろう。

いずれ消え去るものへの郷愁。
好きになれた曲を時系列に記録していく、というその一点だけに夜な夜な費やしていた。
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2015年今このカセットテープを聴いても、エアチェックした時々はまったく色褪せないし、電波乱れや曲の初めや終わりの余韻の空気の音の感じは記憶と完全一致している。

下記のテープは、そのシリーズのNo.1。
A面は、1981年11月渋谷さんのサウンドストリートから。
この日(たぶん)イギリスのベストバンドはがき募集から、途中歯抜けもあるが、曲が進むに従ってハガキ枚数が多い10位から1位への流れになっていく。それぞれのバンド楽曲から1曲選んだのは渋谷さんと思われる。
いわば当時の”海のこっち側”でのブリティッシュロックTOP10みたいなもの。
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入っている曲数は9曲。
60分テープ片面で30分。そこで1曲抜け落ちているのだが、それは渋谷さんの語りをポーズボタンでカットしているうち、出だしを逃がした曲があってのこと。また(たぶん)はがき枚数が多かったクラッシュの曲は、カセットテープの分数をオーバーして途中で切れている。

インデックスカードにはかなり荒い文字。
この荒さに、じぶんが平常書いているよりも興奮している心境が窺える。
渋谷さんが言った曲名を速記で紙に書いて、それを起こしていたので、実際の曲名と違うのもリアルである。

■XTC 「ジェネラル&メジャーズ」1980(4枚目作品「ブラック・シー」より)■

2015年12月5日 土曜日 「雑記帳 冬の気配 -日記・11月29日(日)-」

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11月29日(日)
10時40分ごろ目覚めると眼痛。朝立ち上がりが不安定で・調子悪いのはいつものこと。緩和する術をじぶんなりに工夫してきたが、ただここ数年は、それまでと違う。
しばらく寝床で横になったまま、ラジオから安住さんの声。小田原での公開放送。

周囲の整理。電話帳(タウンページ)2015年版。いざという時、こんなものをめくるだろうか?めくらないだろう。捨てる。
とっておくモノは使えるか使えないか、ではなく、使うか使わないか、である。まさに。

これは断捨離啓蒙活動家が言っていた言葉。なるほどと思う。
彼らの本にお金を投資することは避けて、ヒントだけ取り入れる。
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ネット環境がここ数日不安定で、ときに切断されたまま。スタンドアローン状態のパソコン。
そんなときはせっかくのきっかけなので、なくてもいい過ごし方をしてみる。録画した過去の映像を視る。
15時前外に出る。いつもの公園に住まうネコたち三人にカリカリ。ネコを見て走ってきた小さい子供たちに、一時ネコたちは避難・食事は中断される。
空は曇り。なんでこんなに気がふさぎ苦しいんだろうか?と途中で薬服用してなかったことに気付く。
天気の悪さがこころに作用している部分もある。
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各所で祭り・様々な催し物がある季節。歩くと各所で酉の市とすれ違う。
それなのに、今日さえ逃げ切れれば、避けることが出来る。そんな神経に傾き、人が集まる箇所を逃げて歩く。一つならまだしも、そこいらじゅう・いつでも・毎日がひたすら祝祭日であるのは苦しい。そんな東京のありさま。
歩きながら様々な楽曲がmp3プレイヤーから現れる。

・スティーヴ・ヴァイ「ボーイ・フロム・シアトル」
・トーマス・リア&ロバート・レンタル「デイ・ブレイクス,ナイト・ヒールズ」
・ロストジョッキー「マターズ・オブ・セラピー」
・コネットプロジェクト「ニュースター・ブロードキャスティング・イリディアル」
・テストデパートメント「パックス・ブリタニカ」
・アウスゲイル「キング&クロス」
・デヴィッド・トゥープ「チェア・ストーリー」
・コワルスキー「Tschak」
・ニューオーダー「マーダー」「夢盗人」
・ペイルファウンテンズ「サムシング・オン・マイ・マインド」
・アズテックカメラ「想い出のサニービート」
・カール・ストーン「ウォール・ミー・ドゥ」
・バンドアパート「マルセイユ」
・ボックス・オブ・トイ「アイム・シンキング・オブ・ユー・ナウ」
・シカゴ「サタデー・イン・ザ・パーク」

■Chicago 「Saturday in the Park」 1972■
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12月5日(土)
毎週土曜の楽しみはラジオを聞きながら歩くこと。
その中でも15時からの「宮川賢パカパカ行進曲」。笑えるお便りを紹介する番組。
宮川さんのこの番組で掛かる音楽は、かつてのヒットチューンが多いが、そのあんばいがとても絶妙。

いつもこの番組を聞いていると頭にはシカゴの「サタデー・イン・ザ・パーク」が鳴っている。実際この曲が番組内で掛かった日もある。
このシカゴの曲には、公園で自由にそれぞれの人がそれぞれの時間を過ごすさまが浮かぶ。

この曲に込められた深い意味。それを知ったのは最近のこと。
音楽に限らずすべてのものは受け取る側の想い次第だが。
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2015年12月7日 月曜日 「雑記帳 冬の気配 -12月 83/15ー」

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12月6日(日)
さんざ歩き疲れて、家路を辿る。
家に着いてラジオをつけ・着替えをしてると、TBSラジオは橋幸夫さんの番組終わり部分から10時半を過ぎ、”・・・こんばんわ。吉永小百合です。・・・”という声。

吉永さんの熱心なファンではないが、ただ単にひたすらラジオが流れるのがいつもの風景。
だから、この番組を聞いていることにに大した理由はない。でも、無いとリズムが乱れる。

しかし、最近いきなり気が付いてしまったことがある。
番組に流れるJRのCM。遠いことと思っていたのだが「大人になったら」と50代からの旅会員「大人の休日倶楽部」。まったく意識をしていなかったことをいきなり突き付けられる。

そして「正直、感心しないCMなのだ。あらがってやる。」
そう心で吐いてみるが、云われると覆いかぶさってくるものはある。こっちにおいで、とキツいときに限って、顔色を窺ってはそのスキに入り込もうと、現れてはたぶらかそうとする駅前の新興宗教みたいなもの、と一蹴したくなる。
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土曜日は冬らしい美しい日。荒木(経惟)さん言う「カーン」という日差し。
「写真は光と影がつくり出すんだよ」という通り、冬に向かう太陽は絶妙なコントラストを描き出す。

そのいっぽう、日曜日はマグマのようにうねる雲が空を覆った冬の日。
公園に行って樹々の森を見上げシャッターを切る。そうして樹の下を歩くと、ほとんど落ちつつある葉っぱはさくさくと軽い音をたてる。
落ち葉焚きに向いた乾いた葉っぱ。

この季節・散策して歩いていると「Walk In The Forest・・・」と始まる部分、細野さんの声が聞こえる。YMO最後のアルバム『サーヴィス』に収録された「Madmen」の一節。

そしてゆったりとしたテンポが優しい「Shadows On The Ground」。
「November・・・My Whole World Was Cold And Grey・・・」。
11月はすでに終わってしまったけど、『サーヴィス』の曲を聴いていたのは12月。1983年のこと。

まだ紅葉は美しく、季節は秋との喫水線に位置している。そして、しだいに冬の風情に変わってく。

■YMO 「Shadows On The Ground」1983■
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雑誌「サウンドール」最終号、1984年3月号もカビがひどくなってきた。
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5年間の活動で疲れ果て、再度真っ白になり、その後・中沢新一と旅に出る細野さん。
その細野さんがこのときまだ36歳だったことに、今さらながら唸ってしまう。

2015年12月9日 水曜日 「ニューウェイヴ・カセットシリーズ ① 1981年11月10日 sideB」

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先般のっけたカセットテープのB面。筆舌にしがたい1981年の冬の刻印。

受験勉強と称しては、机に向かって何をしているかと言えば、FM雑誌に蛍光ペンでアンダーラインを引き、エアチェックにふける。火曜日は、教授のサウンドストリート~ふたりの部屋~そしてクロスオーバーイレブンというささやかな楽しみの夜。そのとある11月深夜に録音したものがB面にあたる。

しんしんと冷える冬の夜には、密閉型のヘッドフォンから漏れる音以外は何もない。
周囲が自然に囲まれた、引っ越し後の孤独な田舎生活の夜は、東京下町には味わうことなかった深さと戸惑い。誰も近くに知り合いがいない厳しさだった。孤立無援の戦い。

時折鉄橋を渡っていく電車の、ガタゴトする彼方の音がやってくる。
それはそれまで、三ノ輪の夜に南千住引き込み線から聞こえる「ガチャ」「ポポーッ」という貨物列車の音の優しい響きでは無かった。

とてつもなくしんしんと冷える部屋に、暖房器具は足元に置いた小さい電気ストーブ1個。
気遣ったのは親の方だったが、ジャパンの「My New Career」に感化されたのも含め、あえてじぶんを苦境に立たせるようにして”それでお前さんはどうするんだい”という自問自答を自らに課していた。マゾといえばマゾそのもの。自らを律するために、放っておけばありつける様々な恩恵・支給を拒否した。

渋谷(陽一)さんがラジオで言っていた「わたしは痛み止めを飲まない主義で・・・」に影響を受けるのはその後だが、それまで親や家庭状況に流されてきたものを捨て去り、すべての選択肢を自らで行わねばならない、と思った1981年であり、そんな初めての冬だった。
それでも状況は一介のコドモごときを許すわけがなく、じぶんを呑み込んでいくのだが、そう目指した夜の連なりだった。

クロスオーバーイレブンのジングルが終わり、始まった1曲目が初めて出会ったアイスハウス。
その後長い付き合いになっていくが、このとき彼らがオーストラリアの人と知らず”ブリティッシュ”という認識でいた。

■Icehouse 「Icehouse」1981■
どういう組み立てだったのか?当時、不思議とクロスオーバーイレブンは火曜日にニューウェイヴの新譜が掛かることが多かった。教授のラジオとリンクさせたのか否かは未だに不明である。
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みうらじゅんさんが夜な夜な、自室でフォークソングを作って・それを録音していたことが、結果「仮性フォーク」として紹介されるのだが、現れ方は違えどおんなじような想いがこのカセットテープにはある。
DT仲間の伊集院光さんにはそれを捉えた言葉があり、それを解釈して揶揄する場面を多く視る。
しかし、悩める少年としては極めてまっとうな在り方でなかっただろうか?。

ヒトはみんなそんな痛い夜を超えて生きていくんだと思う。それを忘れてはならない。

2015年12月11日 金曜日・深夜 「雑記帳 パースペクティヴ」

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たけしさんがかつて言っていた言葉で記憶に残っている。
その言葉は雑誌で読んだものだが、その雑誌がどこの何かは忘れた。忘れたくらいに遠いが、咀嚼されて体内に在る。

人は生きていく中で、いろんな選択肢が現れ、それらにまたがって多種多様な興味ある全てを構っていたいんだけど、ある道を選んで他を捨て去らねば前に進めないときがくる。

実際はこう言ったわけじゃないないのだろうが、じぶんとして解釈するとこうなる。
たけしさんがテレビを引いて、やっとやりたかった映画に熱中する50代入ってのことと、勝手に思っている。それが妙に最近しっくりくる。

***

たけしさんのような能力とガッツのある人とは違う・・・という自己卑下の言い回しはあるが、それでもそんな言い方はしたくない。じぶんをはぐぐみ・労を費やしてくれた方、数少ないながらもこんなじぶんを未だ愛してくれる人や逢えなかったおじいちゃんやその前のことを想うと、そんな言い方はすべきでない。

そういう夜に、渋谷(陽一)さんのラジオを録音回して聴きながら、もう要らない雑誌を分解してゴミに。生真面目になってペンチを握り、中綴じのホチキスを曲げている。ある人にはどうでもいいことでも、じぶんが今までの怠惰を含め堆積させてきた紙ゴミを「処分、処分」。

***

他人が見ればゴミ扱いの堆積物はとてつもないが、取捨選択の基準は大竹(伸朗)さん曰くの「グッとくる(きた)もの」以外は正直いらないのだろう。それは音楽も同じ。
80年代だけにこだわっていると勘違いする人も周りに居るのだが、90年代も21世紀以降も出会いがあった。あるいは70年代からさかのぼること広大な領域。
それらはたくさんあり過ぎる。だからと言って、それを捨てるという意味ではない。

削っていくと結果的に80年代のものの分量は多いのだろうが、心に響いたのはそれだけじゃない。砂に埋もれていては路が見えなくなりつつあるので、そういったノイズを除去したい。

コトをリアルな私生活に落とせば、「冷えた愛でも夫婦という形式」で付き合い続けられない性(さが)は、世間体ではガキそのものと嘲笑されても、そんな相手と付き合い続けられないのがじぶんである。相手だってつらいだけだろうし。
今は今で一番肌合いが近い人と付き合っているが、来年どうかなどは解からない。

***

生きていくといろんな障害が目の前に立ち現われる。生きれば生きるほど。
30代の終わり頃から、それまで知っていた点と点が線や面となるようにして解かり始めることが出てくる。ある意味、驚きだった。視野が広がり「歳を取るのは良いことだ」と思った。それを心身ともに体温として感じた。

だが、どうもそれも40代後半になると気付き過ぎてしまい、黙ってしまうことが多くなっていく。気付いてしまった現実を目の当たりにすると、その一割も言葉に出来なくなる。まさに障害ばかりが立ち現われる。それはあくまでじぶんのケースであり、何も変わらずのペースで居られる人もいる。

ここでまた、再度三島さんが言っていた言葉や、なぜあの歳で自らを絶たねばならなかったのかを巡る会話がよぎる。社会的に置かれた状況の側面、その一方、あくまで個人としての三島さんの姿、二つがあるのだが、今は後者の方のこととして。
この2つが交錯し合うので、なぜあんな亡くなり方を。。。という事は混乱を産む。

今朝朝風呂に入る時間、武田鉄矢さんのいつもの”三枚おろし”を聞いていた。
そこから偶然「また」「例の」三島さんのハタチまでの成り立ちが流れた。何度も、それを聞きたくはないのだが。

政治家ではなかった作家としての猪瀬。
彼が細かい調査の上で書いた「ペルソナ」は、友人MZ師を通じ、NHK番組を通じよく知っている。
ラジオからは、そこに記載された、三島父子が徴兵検査でアウトとなった場から去ったありさま。
身近にいた同期が言う”彼(三島さん)は、ああいう路と真逆で、当時は可能な限り戦から離れた場所に行きたかった”としても、そんな十代終わりから四半世紀の心の変遷を想う。

■インタビュー 北野武&蓮見重彦■
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2015年12月13日 日曜日 「ニューウェイヴ・カセットシリーズ ② 1981年11月20日」 

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カセットをシリーズ化し出した、その2巻目。
A面1~4曲目はNHK-FM「軽音楽をあなたに」から。すべてライヴであり、レコードにはない魅力的なヴァージョン。
この日、学校からまっすぐ帰って、夕方聞きながらエアチェックしたものだった。

この4曲は、新譜「URGH!MUSIC WAR」に収録された曲。
新譜と言っても、実際この2枚組LPが国内発売になったのは9月21日のこと。
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そして、5・6・7曲目は、クロスオーバーイレブンからの曲。
この並びを視て「そういえば・・・」とカセットテープを今年買ったラジカセに入れてみると、記憶は正しかった。
実際は8曲目が入っている。

途中で切れたためにインデックスカードに記載は無いが、ジャパンの「マイ・ニュー・キャリア」が入っている。ティム・ブレイクの音が細くなって行き、消えていく後に出てくるジャパンへの繋がり。その合い間にある静けさの中のFMノイズ。
それがわたしには絶妙で、切れてしまった曲を消さずに残していた。

■Japan 「My New Career」(Old Grey Whistle Test, Dec. 1980)■
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ひとりきりになりたいなんて
思ったことはなかったくせに
とにかく僕はそっと家を抜け出して
ここまで来てしまったんだ

南に住む人々は
ささいな人生の浮き沈みを繰り返しながら
まっすぐ前を向いて歩いてる
確かな足取りで

彼らが僕たちの唄をうたってる
外の人々には何も聞こえないけれど
彼らが僕たちの唄をうたってる
僕の新しい人生のはじまりに

やっと気づいたんだ
違う生き方もあるということに
船が港に着くたびに
出発の時はやってくるのだから

南へ行けと彼らは言うよ
太陽は僕の町には沈まない
僕を物憂い気分にさせるのは
この熱風の中の疾走

僕は誰ひとり傷つけたりしていない
ことに 君を傷つけるような真似は
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1981年すり切れるほど聴いたジャパンのLP「孤独な影」。1980年作品。
デヴィッド・シルヴィアンがこの曲を創ったのは、まだ21歳。

すでにジャパンとしての4作目。
少年の中で鬱屈したものを表現として昇華させ続け、相当な自己との闘いの末、到達した4枚目。この方向感はすでにこの時点で確固たるものとなっており、その後進むべき道を明示している。
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LP「孤独な影」は、じぶんの中でも(YMO群を除いた)生涯の100枚の中の一枚である。

2015年12月14日 月曜日 「スケッチブック -モネ展・上野都美館-」

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前を通るたびに「また行列か、、、も少ししたら来よう」。
毎週そうつぶやいている間に最終日になってしまったモネ展。
ついに尻に火が付いて、必死になって行った上野の都美館。

正直、展示内容は大仰な広告ほどのものでは無かった。
また、絵の配置の仕方、人の動線を考えていないロケーションが上手くなかった。
そういうスタッフ側の出来は別にして、モネ展を見れたことに感謝した。

見終わって外に出た道で友人MZ師からTELあり。
「どこに居るの?」「今、上野の森だよ。」
そんな彼は、奥さんの義母を連れて箱根に居るという。「偶然だが、午前中箱根の印象派の絵を視ていたよ。」

彼に言われて「そうだな」と思ったのが、よほどなことがないと普通見られない絵を、目の前で見られる幸福。
「お互い、カネと自由時間がある利益収奪者や泥棒連中じゃないからね。海外になんか早々行けやしないんだから。」
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最終日とあって、中に入るのに50分を要する。辛抱する。
都美館3フロアのうち、上がって行った最終フロア2階。

そのフロアは、70・80代にモネが描いた絵をまとめていた。初めて見たものばかり。
しだれ柳・日本の橋・・・目が悪くなるなか、キャンバスにのせた絵の具と筆。
荒々しい筆の転がりと、狂ったような色使い。かすれて塗られていない箇所・逆に絵の具のかたまりがこんもりとそのまま凝固した箇所。
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【「キスゲの花」1914~1917年作品】
多くの人は注視して観ていなかったが、私が引っ掛かりを持ったのは、このフロアに掛かった絵たち。肉々しい絵につい急に吉田カツを想い出す。それくらいに、この時代の絵は従来のモネの絵画への印象とは異なる躍動感。

眼が悪かったモネは、これらの絵の全体像を、睡蓮の連作のようにして、微細な印象を表現すべく練磨した神経では描いていない。色や形をきちんと認知していたかは分からない、ある意味筆の成すがままに任せたはずである。ただ、絵とはそういうものであり、偶然が成した痕跡を一定距離や時間が、その佇まいを醸造する部分がある。
そこに一定の作業が作り上げた集積物が在る、という姿。

ある印象を形として成そうとした画家が、それを離れて、もう一つの絵の在り方に渡り・移っていったのは別段おかしくはない自然の成り行きである。
絵にはルールはない。自由だからである。
そんな自分の勝手で一方的な解釈で見られた70・80代の作品コーナーこそが、昨日の自分のめっけものであった。

そして、肉眼と紙ではおおいな違いだが、この時期作品のポストカードを買い、外に出た。
絵が好きで来ているのかどうか定かでない人が群がる場所を離れ、外に出るとすでに陽は沈んでいた。
とにかく静かな場所へ。。。と森に入り込んでは歩き巡り、たばこに火を付けた。
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人が居ない方向へ。
上野公園から鶯谷、入谷、下谷、三ノ輪を通り越し、日本堤、山谷を抜けて島まで歩く。時折雨が降ったりやんだり。

暗い道で聴き通したひさしぶりの「ポセイドンのめざめ」が素晴らしく良かった。
”プログレッシヴ・ロック”という呼称が一般に使われるが、ほかに使う言葉がないからそう呼ぶんだ、というのがよく分かる。
キング・クリムゾンという唯一無二の音楽はロックという概念ではくくりようもない。それはピンクフロイドもイエスもELPも同様だが。

暗い道とか外の電飾・街灯とあいまった世界がシャッターを押させるうちに、「ポセイドン」はじぶんをオルナタティヴワールドにいざなっていった。

■King Crimson 「In the Wake of Poseidon」1970■
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2015年12月15日 火曜日 「ニューウェイヴ・カセットシリーズ ② 1981年11月20日 sideB」

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カセットテープシリーズ②は、B面を開けると「なあんだ」と思われる選曲かもしれない。
1981年11月と言えば、作品「テクノデリック」が発表された月。
そんな11月20日に「なんで今さら“BGM”を録音?」と。
それに大村憲司さんのソロは、1980年末までの第二期ワールドツアーの流れのままYMOファミリーで制作・発表された春夏向けの作品だし。。。

しかし「なあんだ」と言える者は、今だからこそ、ひもじい思いをしていた少年時代を忘れているのだろう。
不自由無い生活と十分な余裕を享受して、きっとそれをお払い箱にしてしまったんだ。
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毎日毎日、その日聴いた音が心に到達しえたなら、その曲を録音する、を積み上げ残す。
それを、繰り返す中学時代。
既に持っているYMOのLP「BGM」をそのまま録音して残そうと思ったのは、ラジオで掛かったものが再度心に響いたからである。

「その行動はどういう意味?理解できない。」とキチガイじみて思われるだろう。
「もともとカネもねえくせして、持ってるLPとおんなじ曲を録音してカセットテープ代のムダじゃねえか。バカじゃないの。」と言われるだろう。

だが、日々FM雑誌を見てヘッドフォンをしてラジオ・エアチェックする中で、耳に聴こえてきた音の流れが良かったなら、その体験を残したいと思った。既に何十回も聴いている曲であっても・その音楽と過ごした有益な時間がある。
それが録音を残した理由。

よく通る好きな道に咲いた花の姿を、キレイだなと通るたびに思い、毎回シャッターを切り、写真に納めることと同じである。

同じ曲であっても、それを聴く日や時間や条件が異なるだけで新鮮に見える。聴いている機器や状況で響きは異なる。
曲の順番を入れ替えるだけ、あるいはほかの曲との流れ、それだけでも音楽は大きな変化をもたらす。
エアチェックやカセットテープ作りは、料理と同じである。

二重・三重の録音で出る余分なカセットテープ代は、別の場所でなんとか工面せにゃあかん悩みだったが、だからと言って計算だらけの理性的生き方も出来ない。カネはあとから何とはするぜ、という勢いだった。
(現実には、何ともならないだろう、と分かっていても。)
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ニューウェイヴカセットシリーズ②のB面は、19:20~20:00のNHK-FM「サウンド・オブ・ポップス」。確か?時間遅れの新譜特集だったと思うのだが、3月21日に発表された「BGM」A面トップ、三人三様の3曲が後半収まる。
そこに、分数が余ったので、余った分数を時計で測り、持っていたLP「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」から教授の名曲『キャスタリア』を入れた。イーノに影響を受けたピアノ曲。

この余った部分に持っているレコードなどを入れ込む、という方法は、当時のFM雑誌で”カセットコレクター自宅拝見”みたいなコーナーで紹介された人がやっていることに感化されたものだった。

■ティム・ブレイク 「宇宙の灯台」1978■
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ゴミの巣窟整理の中で、ああそうだ、と発見したものがあり、しげしげ眺めていた。
これもまたカビが生え出しているけど。

写真を現像に出すとタダでもらえた写真ホルダー。
ここに70年代終わりごろから80年代にかけて、FM雑誌から切り抜いたカセットテープ・インデックスカードの背表紙用の名前ラベルを収納していた。使う予定だったものが使われぬまま残ったもの。
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残り物に福がある。

2015年12月17日 木曜日 「The Elements Of King Crimson Tour In Japan 2015」

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エイドリアン・ブリューが居ないしな。。。そんなたわごとは実に”たわけ”だった。
想い余った末、わだかまることに耐えかねチケットを取ったキング・クリムゾン追加公演。
渋谷・オーチャードホール。聴くことだけに夢中で、とても2時間半が経ったとは思えなかった。

コアな人がどう言おうが構わないが、私にとってこれほど素晴らしい演奏はなかった。
そんな唯一無二のチューンを聴けたことに、なによりものひたすらの感謝。
さすがはフリップ先生とその仲間たち。全演奏パーフェクトな様に、いやいやなんとも。。。

ずーっとここ数週間mp3プレイヤーにしのばせて聴いてきたクリムゾンの作品たち。
今朝も作品「レッド」に始まり、肉眼と耳で聴いた「レッド」、その帰り道も再び「レッド」を聴いた。

”何がどう”などまとまらぬまま、帰ってもひたすらクリムゾンを聴いているうちに、深夜になってしまった。”何がどう”は、この”混乱”が収束しうるならば書いてみたい。

■King Crimson 「Red」1974■
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子供だましの音楽はしばらくの間聴けそうにない。
音楽は遊びじゃねえんだよ、と音そのものが無言で突き付けてくるやいば。
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2015年12月18日 金曜日 「年の瀬を迎える前に、峠で一服」

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明け方目覚めると、灯りをつけたままだった。
灯りとエアコンを消す。簡易ポットに少し残る白湯を飲み、再び横になる。

定時となって、何度もアラームが鳴る。奇妙な夢を見ていたよう。
普段以上に調子悪く、朝起きたはしたが立ち上がれず、それもまあまああることだが、昔の肝臓壊した時思い出す感覚。
次第に今日は無理だと気持ちが傾き、横になる。
起きると8時半を回っていた。休むことにする。年の瀬を迎える前に師走半ばで失速し、ヘタってしまった。

気が抜けると、それまで緊張していたものがはち切れ疲労がこぼれ落ちたり、そこにウイルスが流入したりする。風邪はすでに一回引いたが、薬を一切使わずに戻った。
今日は別に風邪らしい症状ではないが、入院する親が居る以上、何かあったら動かなければならない側は大胆かつ慎重にならなければならない。

大胆とは、いくら強引でも、今日やらねばならないことを全て破棄すること。
慎重は、無理している心身を休めること。

***

お茶を煎れラジオを付けると、大沢悠里さんのお色気大賞が流れている。外は快晴。
食欲は無いが無理してでもパンを食べ、洗濯をする。こまごましたことをする。

平日、今も外で社会は歯車が回り続けている。
そこから放置された時空、ぽっかり開いたすきま。
ラジオを流れるニュースも、パソコン画面上に見えるものも、異界のモノに映る。
冷静な神経で見える。ふだん現れないモード。

急ぎ足の日々には、なかなか落ち着いて聴けない音楽を掛ける。
”キングクリムゾンプロジェクト”の一枚、「スケアシティ・オブ・ミラクルズ」を初めて聴いた。
気分の波長が合う。メル・コリンズのサックスが、ぼやっとした室内に優しく浸ってくる。
そこからもらった足掛かりで、室内の歩幅は「太陽と戦慄」に向かう。
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風呂に入り支度をし、お見舞いに向かう。
冬らしい寒さとピンと張った風景の色の鮮やかさ。「太陽と戦慄」を聴きながら歩く。
お正月を家で迎えさせてあげることが無理となり、否が応でもシフトチェンジしていく中、峠で一服の休みは今の自分には必要なのだ。

夜戻り、明日の仕事用道具を整理し、支度をする。

そんな折、これまた偶然、フリップ先生が奥さんのトーヤと出ている番組にばったり出くわした。ニホンでもよくあるバラエティ番組「夫婦でクイズ」といったもの。
先生がこのような番組に出るとは驚きであった。

■イギリス番組「All Star Mr & Mrs」ロバート・フリップ&トーヤ夫婦 2013年5月8日■
ステージ以外のドキュメントで、先生が笑ったり茶目っ気あるシーンは観たことはあったが、ここまで優しい顔をしたフリップは見たことがない。
しかし、なんと可愛い夫婦なんだろうか。全く異質なことは分かってはいたし、どうやってあの2人がやりとりしているんだろうか?と不思議に思ったものだが、全く異質だからこその関係というのがよく解かった。
先生が学者然としたなかで、トーヤは屈託の無い自由な明るさを振る舞う。本当に愛らしい2人のさまに自然と顔がほころび、気持ちが緩んだ。
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エーゴがしゃべれる者ではないが、この映像を視て、先生のありさまに「つくづくイギリス人らしいな」と思い、XTCのアンディ・パートリッジを思い浮かべた。
大真面目に語るから大真面目に受け取ろうとするとだまされる。
そんなことはイーノとコラボレーションしたことが起点となり、元々はイーノが開発したディレイシステムを”フリッパートロニクス”と命名するに始まり、様々な予言めいたことを言ったり。
昨夜は終幕で「ブラボー」と思わず立ち上がって拍手を送る大勢のファンの喝采の中、先生は表情一つ変えず直立不動だった。実に先生らしく、抒情的になってはいけないのだろうが、こちらはその様が何とも切なくつい涙腺が緩んだのだった。
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この見開きは「フールズメイト」1981年4月号。
単なる編集上の偶然なんだろうが、左がトーヤ、右ページが先生になっている。ようくこのページを眺めることがある。
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