
このカセットは、1981年暮れから翌年1月に向けて、受験勉強と称して机に向かうさなか1曲1曲エアチェックしていった。
当時はじぶんだけに向けた「セレクション」テープで、繰り返しよく聴いた。
ほとんど23時からの「クロスオーバーイレブン」でエアチェック。B面1.2のみ夕方の「軽音楽をあなたに」で録音した。
A面
1/OMD「プロミス」
・前述の2nd「オーガニゼーション」収録。

2/ポリス「暗黒の世界」
・1981年11月発売「ゴースト・イン・ザ・マシーン」B面最後、つまりアルバム最終の曲になる。元タイトルは「Darkness」。
ポリスの中では一番シリアスで好きなアルバム。この曲は、抑揚を減らしてミニマルなつくりの曲になっていて、聴いていると、ひたすらまっすぐな夜の道を進んでいるイメージが浮かぶ。走っても走っても延々と続く道。

3/YMO「新舞踏(Neue Tanz)」
・1981年11月発売「テクノデリック」収録曲。珍しく作詞・作曲ともに3人が関わっている。
ジャンル分類されることを拒否するような不可思議な曲で、同じような曲は思いつかない。
ミニマルな音が浮遊し、ときに交わり、またそれぞれに乖離する。口笛のようなサンプリング音のキーボードはわらべうたのようなメロディ、石油カンを叩くドラム、ケチャの掛け合い、ベンと唸るベース。それぞれの音はまるでガムランの各パート楽器となって、カラフルな万華鏡の中で踊る。どこが完成ということもなく筆を置くように仕上げている点で、この曲は前作「BGM」の手法・目論見に近い。
深夜のヘッドフォンから流れている時空は、明らかに次元の違うゾーンに突入してしまう。聴いていると別世界に踏み込んでいる。
当時のエアチェック手法は単純で、「クロスオーバーイレブン」から好きなものをリアルタイムで抜粋して録音していき、残り分数が少なくなったらB面へ行く。曲の並びを入れ替えることのできない条件下でエアチェックしていると、生理的に要らない曲が除外されながらも、たまたま並んだ曲の繋ぎが「組み合わせの妙」を生み出す。
「テクノデリック」という作品が凄いのは今更言うまでもないが、その中の神秘的な1曲をこうして抜き出してあいだに挟むと、偶然選んだ1.2.3の曲の流れは水面下で繋がる世界となる。

4/ピーター・バウマン「ホーム・スイート・ホーム」
・1.2.3から一転して明るい軽やかな世界へ。この曲を収めたLPは雑誌にも掲載されていなかったから国内発売はなかったか?
元タンジェリンドリームのピーター・バウマンの可愛らしく優しい1曲。この曲が入った彼の3枚目のソロアルバム「リピート・リピート」はロバート・パーマーとの共同プロデュースで、ここでは彼のヴォーカル入りの曲が聴ける。ソロ1.2枚目はタンジェリンドリームと繋がるインストゥルメンタルだった。ミニマル、ポップでメロディアスだったか、3枚目で80年代に入り、自分もテクノポップしたくなったようで、自ら歌い出した稀有な作品。

5/カーズ「シンス・ユー・アー・ゴーン」
・1981年11月発売の4枚目アルバム「シェイク・イット・アップ」A面1曲目。
カーズとの出会いは「レッツ・ゴー」という1979年ヒット曲。この曲を収録した2nd「キャンディーO(オー)に捧ぐ」はよく聴いたアルバムだった。カーズの当時のじぶんの分類はニューウェイヴ。このバンドに興味をそそられたのは、何よりも、形式的に形骸化された道に染まらないでいたこと。シンセサイザーなどを使いながら正体不明な音像を創り、当時の旧態依然なロックが持つ形式やパターンに陥らない楽曲を創作していた。
この曲はメロディも良く、リック・オケイセックの伸びやかなヴォーカル、メンバーのコーラスなどが耳に優しい。

B面
1/ペンギン・カフェ・オーケストラ「エール・ア・ダーセ」
・デビュー自体は70年代だが、一般的に知られたのは1981年。LPの国内発売で登場した彼ら。
1981年9月21日に発売された2ndアルバムA面1曲目「エール・ア・ダーセ」。ギターアンサンブルとうっすら乗っかる歌声がシンプルで美しい。1stに続きブライアン・イーノがプロデュース。当時のレコード広告には「室内環境弦楽団風クールミント不思議サウンド・・・」と記されている。
彼らのシンプルな音を不気味と言ったのは中村とうようさんだった。ほかの方もそう言っていた。
確かに背後で笑みを浮かべるイーノの顔が見えるかのようだが、実際の作業にはイーノはタッチしていないはずで、アドバイス・責任者としてプロデューサークレジットがされたものだろう。

2/カリオペ・ディスク・オルゴールのメロディ
・B1ペンギン・カフェと共にこの日の「軽音楽をあなたに」では、イージーリスニングではない「精神に効く」治療としての優しい音楽特集。
このカセットインデックスに曲名は書いていないが、円盤をはじいて音を鳴らしていくオルゴールのLPから何曲か掛かったうちの1曲を録音した。そのオルゴールの音を集めたレコードとは「オルゴールと自動オルガンの饗宴」、1981年12月に発売されたもので、CD化はされていない。ミュージックマガジンでは、これもとうようさんがレコードレビューを書いている。

3/ティム・ブレイク「宇宙の灯台(Lighthouse)」
・何度か紹介した曲。1978年の作品「Blake's New Jerusalem」より。
選曲の方の趣味なんだろうが(小倉エージさんかな?)ニューウェイヴの新譜とよくなじむ曲で、曲と曲のブリッジとして何回も使われた。

4/ウルトラヴォックス「ニュー・ヨーロピアンズ」
・1980年「ヴィエナ」収録。サントリーCMで三宅一生がヘリコプターに乗り現れる印象的な映像。そのバックに鳴るこの曲。当時、音と映像の組合せにイチコロになった。
じぶんにとっては、YMOの富士カセットCM「テクノポリス」に並ぶ衝撃であった。曲の始まりのミッジ・ユーロのカッティングギター。このカッコ良さ。一個人にとって歴史的な曲の入り方だった。
このCMがきっかけでブレイクしたウルトラヴォックスは、B面や未収録曲を集めたLP「新欧州人」を出すとともに、日本来日公演が決定した。

5/カーズ「アイム・ノット・ザ・ワン」
・アルバム「シェイク・イット・アップ」A面3曲目。
上がり調子な曲やどことなくユーモアが漂う曲などの合間に、こんなバラードや甘い曲が入ってくる。この辺のバランスがカーズというバンドの魅力。
この曲も名曲。
